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MOOVERプロジェクト
 インタビュー

CEO

CEO略歴

John Peterson

1971年4月3日生 (46歳)
アメリカ カリフォルニア州出身。
両親ともに医師である一家に生まれ育つ。幼少期の頃から医師を目指し、学業は優秀だが、運動は苦手だった少年時代を過ごす。アマチュア無線に興味を持った事から通信技術に魅せられ、医師の道を捨て、通信技術者になる事を決意。マサチューセッツ工科大学卒業後、アメリカ国立技術研究所(NIST)の情報技術研究部門ITLに所属。インド最大手通信Bhari Airtelで共同研究する等グローバルに活躍。その後、国際電気通信連合ITUの途上国支援プログラムに参画するも、自身の理念との相違から、モバイルデータ通信をシェアリング可能にするMOOVERプロジェクトを立上げ今日に至る。

本日はインタビューのお時間をありがとうございます。CEOのこれまでの経歴とあわせてMOOVERプロジェクト立上げの背景を伺いたいと思っています。

まず始めに伺いたいのは、どのような家庭に生まれ育ち、どんな少年時代を過ごされたかお話いただけますか?

僕は1971年にカリフォルニア州のいわゆるシリコンバレーと呼ばれる都市から少し離れたギルロイという町で、両親とも医師(共に外科医)である一家の三男として生まれました。幼いころからそんな両親をリスペクトしていましたし、10歳ほど年の離れた兄たちも医者になることになんら疑問を感じず、それに向かって勉強をしていました。

ではご両親からも医師を目指すよう教育されていたのですか?

そうなればいいなと思っていたでしょうが、両親の教育方針を振り返ると、「これをしなさい、あれをしてはだめ」と要求されたことはなかったです。もちろん「医師を目指せ」とは一度も言われたことはありません。逆に私がやりたいことは何でもさせてくれました。

その為、自らの意思で医師になるために勉強していたのですが、その当時は優秀な兄たちの背中を毎日見せられていたので、その影響が大きいと思います。

そのおかげで、学業成績は常に高い評価を受けていましたが、運動は苦手。当然、モテるタイプではなく、喋りも苦手でよく吃ってしまい、周りからかわれることも多かったです。そんな少年時代でしたので、勉強しかやることがなかったですね。

CEOimage

学業は優秀でも、吃音症で苦労されたようですが、饒舌にお話される今のCEOにはそのイメージが見当たりませんね?

仕事を通じて人と話す機会も増えたので、当時よりはマシになりましたけど、今でも人とのコミュニケーションは得意ではないです。

不躾な聞き方をしてしまい失礼いたしました。そういう人柄も含めて皆さんに伝えたかったものですから、お許しください。
ところで、今のお話では医師を目指していたご様子ですが、どんなきっかけから通信技術に興味を持ち始めたのですか?

今でも鮮明に覚えていますが、1981年に行われた※(1)コロンビア号(スペースシャトル)の初打ち上げの映像を見て衝撃を受け、宇宙に興味を持ちはじめました。友だちがいないため、幼いながらに早くも人付き合いの難しさに悩んでいた頃でしたので、人間とのコミュニケーションは諦めて、地球外生物と交信しようと考え、アマチュア無線にのめり込んでいきました(笑)。

imageコロンビア号

※(1) コロンビア号について Wikipedia 日本語
コロンビア号は、スペースシャトルとして厳密には2号機だが、1号機は滑空実験用の為、宇宙に到達した最初のスペースシャトルとして認知されている。スペースシャトルは、月面着陸を果たしたアポロのような使い捨てロケットではなく、繰り返し飛行可能なもので、1回当たりの飛行コストを大幅にさげ、宇宙をより身近にさせた。人工衛星の回収、国際宇宙ステーション(ISS)の組立等、スペースシャトルなしには実現できず、有人宇宙活動に大きく貢献しており、現在の宇宙飛行士達は、このコロンビア号に乗ることを夢みて幼少期を過ごしている。

きっかけは宇宙人との交信だったのですね?(笑)

確かに、きっかけとしてはこの一人遊びが始まりとも言えますが、この時に職業にしたいと思ったわけではなく、その後も変わらず医師になることを志していました。

実際に通信技術を職業にしたきっかけは、ある人との出会いでした。それは家から少し離れたシリコンバレーを訪ねたときの事です。ご存知の通り、シリコンバレーはIT企業が多く集まるエリアとして有名ですが、そこで働いていた故スティーブ・ジョブズとの出会いが最も大きな影響を与えてくれました。

スティーブ・ジョブズとお知り合いだったのですか!?

彼からすれば接点があったと言えないと思いますが、当時、私は高校生だったのですが、彼はアップルコンピュータを解任させられて、新たにNexT社を設立した頃だと思います。ずいぶん昔の話で会ったのはその1回きりです。

すごく興味があります。ぜひ詳しく教えてください!

僕の唯一の楽しみであるアマチュア無線の※(2)クラブがシリコンバレーにあり、コンテストが行われるため出向きました。いわゆる無線オタクたちの祭典です。そこへ、スティーブ・ジョブズが来ていました。おそらく息抜きとかそんな理由だと思います。

僕はその祭典のミーティングの中で談笑していた際、ジョブズが僕に話しかけてきました。そして彼が「君は無線を使って何をしたいのか」と尋ねたので、私は恥ずかしげもなく、「宇宙人と交信するんだ」と伝えました。彼は、その言葉に興奮した様子で私にこう言いました。

※(3)「それは面白い。僕は声や文字だけじゃなく、音楽や映像もデータにした誰もが簡単に使えるクールなコンピュータを作っているんだ。君が宇宙人と交信できたら、僕が作ったコンピュータで向こうの世界と共有しようよ!」

この言葉に、僕はスペースシャトルの映像を見た時の何倍もの衝撃を受けました。僕が作った無線で宇宙と繋がったら、会話をするだけじゃなく、遠く離れた場所を見たり感じたりし合えることができるのか!と。

NCCC

※(2) CEOが所属していたクラブ NCCC
カリフォルニア州北部が拠点の伝統的クラブ。世界トップクラスのコンテストを開催して無線オタクたちに認知されているが、今でも地元の小さなレストランで毎月ミーティング開催しており、非常にアットホームなクラブ。

スティーブ・ジョブズ
By Mohamed Saeed

※(3) スティーブ・ジョブズ1985年 予言 Gigazin 日本語記事
この時代、コンピュータが今のように一般的ではなかったが、その時期にインターネット社会が到来する事を言い当てている。そしてこの5年後に「WWW」が発表され、ジョブズが作ったNeXTワークステーション上に、世界で初めてのウェブページが設置された。先程CEOがジョブズに発言した内容は、常識はずれな発想をするジョブズには、衝撃というより親近感を抱かせるものだったと思われる。

そんな壮大な夢をすんなり受け止められるCEOもすごいですね。

夢とかそういう感覚じゃなくて、当時は本当にそうしたいと思ったからです。

彼からすれば単なる息抜きだったかもしれませんが、僕には一生忘れられない出来事になりました。そして、通信技術に本気で取り組もうと決意した瞬間でした。

エピソードとしては唯一無二だと思いますが、私が同じ状況でもそこで決意できたかどうか・・・。

それはジョブズほどではないにしろ、僕も変人なのでしょうね。ただその変人が世界を変えると証明してくれたのもジョブズでしたし、僕もただの変人で終わらずに、世界を変えるための努力をしたいと思ったんです。

これまで医師を目指していた所から、いきなり通信業界へ方向を変えるのもなかなか大変だと思いますが、ご両親の反対とか、あとは知識の方向の違い等の苦労はなかったでしょうか?

親自体は割とすんなり受け止めてくれました。もともと自分のやることに口出しする人達ではないですし、直接聞いたわけではないですが、年の離れた兄2人は既に医者の道に進んでいたので、1人くらい違う道に進んだほうが面白いと思ったのかな。

知識ではむしろ通信技術のほうが、アマチュア無線に触れていたので長けていましたので、始めるべきことは見えていました。そこでまずは※(4)MIT(マサチューセッツ工科大学)に入学して工学を学ぼうと決めました。

MIT

※(4) MIT(マサチューセッツ工科大学)志望の動機 Wikipedia 日本語
設立当初は「職業訓練校」と馬鹿にされていた大学だが、ノーベル賞受賞者数でハーバード大学を上回り、世界最高峰の大学として不動の地位を築いている。しかし、カリフォルニア州に住んでいたCEOからすれば、スタンフォード大学やカリフォルニア大学等が近いため候補に挙がるが、当時のイケてる感じが馴染めそうになく、オタク気質が強いMITにしたとの事。

一般人ではMITに入るだけでも大変な努力が必要ですが、いきなりそのプロセスを飛ばしましたね。

僕も天才ではないので努力はしました。ただ入学が目的ではなかったので、そこにあまり価値はないですよね。

おっしゃる通りです・・・。では大学ではどのような事を学ばれたのでしょうか?

僕がMITに入学してから行った事は、当時業界では※(5)GSM(2G)が実用化を目指していましたので、その規格をなぞるように研究しました。

※(5) GSMについて Wikipedia 日本語
CEOはMITでの通常の学業とは別に、数名の仲間とともに独自に研究していき現在の基礎を作り上げた。

GSM(2G)とは具体的にどういうものでしょうか?

GSMはアメリカでは850MHz帯と1900MHz帯を使用した通信規格の事で、当初Circuit switchingつまりCSD通信を採用していて、最大9.6Kbpsの速度しかでなかったですが、途中何度か技術改良があり、仕様をGPRSに切り替えて最高171.2Kbpsまで速度を上げる事が出来たのです。このGPRSが当時画期的で・・・。

CEOすみません・・・。ちょっと私含め周りがついていけないので、どんな事ができる技術なのか概要的なものを教えて頂いても宜しいですか?

ああ・・・。当時僕らは基本的に通話しかできないアナログ方式の通信規格の回線だったのですが、GSMはデジタル方式を採用して、声だけじゃなく電子メールやインターネットへアクセスできる画期的なものでした。それまでの携帯電話よりも端末の小型化も進み、GSM回線は急速に携帯電話を普及させるきっかけにもなりました。

当時の最先端技術を研究されていたのですね。

当時は学生だったので、その技術をなぞるだけでしたが、自分には新しい発見が沢山ありましたし、課題も沢山見えました。僕が目指す宇宙人との交信には程遠かったので、まだまだ先は長いなと思いました。

そうでしたね(笑)。その後はどういう活動に移ったのでしょうか。

数ある通信技術の中から、有線では宇宙とやり取りするのは不向きだから、無線技術に特化したデータ通信に力を入れている組織に入ろうと思い、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の※(6)情報技術研究部門(ITL)に所属しました。 ※(7)AT&Tなどのいわゆる携帯通信会社に入るのも良かったのですが、あまり世間のニーズを問うものに興味はなく、ビジネス目線が求められるのも嫌で、純粋に技術と向き合いたかったことから選びました。

※(6) NIST 情報技術研究部門(ITL)について
世界トップクラスのネットワーク技術研究機関であり、現在でも次世代ネットワークを牽引し続ける組織。
※(7) AT&TについてWikipedia 日本語
アメリカ最大手通信会社であり、電話を発明したベル電話会社が前身。

どこも所属することさえ難しい組織ですが、CEOは選び放題だったようですね。そのNISTではどのような研究をされたのですか?

特に変わらないです。GSM(2G)からIMT-2000(3G)の研究開発に変わっただけです。実際Gの境目は技術者からすると通信方式を効率よくしていく過程で日々アップデートしているだけに過ぎないです。もちろん周波数の割当等もあり実務的にも大きな変化はありますが、1つのGの中でも細かく仕様は変わっています。

なるほど。私のような一般の利用者には気づきにくい部分ですが、コツコツ地道につなげていくことが技術者としての仕事なのですね。その機関でのお仕事の中で、インド最大手の通信会社であるの※(8)Bharti Airtelへ長期で共同研究にいかれたそうですが、この時に感じた事はありますか?

インドには世界的に注目を集めるの※(9)インド工科大学があり、GoogleやアドビといったIT企業のトップに就くような人物を多く輩出しています。Bharti Airtelにも卒業生が多く就業していましたが、その多くは世界トップレベルで活躍できるほど高い能力を持っていました。

その理由が興味深いのですが、彼らには「カースト制度」の名残が今でもあり、身分によって就ける仕事が決められている地域が多く残っているそうです。ただITという職業は新しい職業として規定がないので、身分を超えられる職業として、若者が自由を勝ち取るための努力と熱量が高く、僕らとは学ぶ意欲が比べ物にならないのです。

しかし貪欲に新しい情報を得ようとしている彼らと、そうではない人たちとの間には、相当なデジタル・ディバイド(情報格差)が存在している事を体感したのもこの時です。

Bharti Airtel

※(8) Bharti Airtel Wikipedia 日本語
インド最大手の通信会社であり、契約数は3億人も登る。インド以外にもスリランカやアフリカ数各国でも事業展開している。

インド工科大学

※(9) インド工科大学 Wikipedia 日本語
CEOの説明にある通り、IT業界を中心に世界が注目する大学。同校の就活は、自ら出向くのではなく、大手企業がハイヤー(連れ去りヘッドハントする)しにくる程、魅力ある学生が多く在校している。

いま情報格差というキーワードが出てきましたが、MOOVERの核心にせまる部分かと思います。インドの諸問題は気付かされる事が多いお話でしたが、彼らのその「カースト制度」による貧富の差や、途上国における貧困を通信技術でなくそうというのがMOOVERの目的という事でしょうか?

ちょっと違いますね。ご指摘のとおり、情報格差が経済格差に影響を与えていると思います。その逆もしかりですが。しかし僕が解決したい問題は、人として生きる上で当たり前の情報を手に取ってもらえるようにしたいという事です。

極端な例になってしまいますが、病気にかかっても、悪魔の仕業だと言って病院に行かず、お祈りまたは悪魔祓いの儀式をしたりする人がいますが、その結果、助かるはずの病が原因で命を落としてしまうこともある。そうではなく、病気にかかった人が、治療方法として「お祈りもあるが現代医学もあるよ。」という情報を得る機会を平等に与えたいのです。

それは古い慣習や価値観に縛られている人々を、情報を通じて、より現代的なものへ移行させたいという事でしょうか

いえ。これは悪魔祓いやカースト制度を否定したいわけではなく、どちらを選択するかは価値観の違いなので、良し悪しを決めることに興味はありません。

世界には自分が住む小さなコミュニティの中だけの価値観で息苦しい思いをしている人が多くいます。違う価値観や生き方がある事を、自由に知ることが出来れば、今とは違う道を歩むことがあるかもしれません。

もちろん、知らなくて良い事や知りたくなかった事に直面する場合もあるかもしれませんが、その情報を得るか得ないかも含めて、どう判断していくかを個人に委ねる社会にしたいです。

私は経済的に豊かになることで社会がよりよくなるという考えでしたが、CEOが考える情報格差の問題は、もっと人間的な部分の問題提起ですね。

人間的かどうかは別として、技術者の使命として、実現可能なテクノロジーがあるのなら、誰もがそれを利用する権利があるという前提までは提供すべきだと思っています。

そのテクノロジーを使って何をするか、何を得るかは人それぞれ違います。当然使わないという選択もあります。ただ使えるという権利だけがある。私はMOOVERがローンチされたら、何が起きるのかをみてみたいのです。

AppleやGoogleも、誰でも使えるプロダクトを提供しただけで、使い方までは具体的に言及しないですよね。こういう使い方があるよという提案だけです。ユーザーはつくり手が想定しない使い方をすることが多く、自由に使われることで新たな発想につながり、テクノロジーとして発展すると思っています。

テクノロジーとは何か。非常に深く考えさせられるお話です。

さて、インドでの活動の後に、※(10)国際電気通信連合ITU(国連機関)の途上国支援のプログラムに参画されますが、今まで最先端技術を高めるものから、慈善活動的な目的になりましたね。

そうですね。ただ、慈善活動のつもりはなくて、インドには自分よりも優秀な技術者がいたように、他の国にも同じように優秀な技術者はいるはずで、環境のせいでその能力が埋もれてしまう事が勿体無いと思ったからです。

これまでの研究でも、誰か一人が新しい技術を生み出しているわけじゃなくて、沢山の技術者の知が集まって形になるものなので、世界に埋もれている優秀な人たちと一緒に技術を高めたほうが、より通信技術を発展させる事が可能になると思っています。そして先程言及した、情報を手にする権利を示せる直接的な行いになると思ったからです。

ITU

※(10)ITU途上国支援プログラム
アフリカ大陸やアジア等にある後発途上国と呼ばれる国々を中心に、ICT開発のサポートを行っており、2020年までにインターネットへ100%アクセスできるよう努力をすると公言している。

なるほど。これまでの異国での経験が通信技術への向き合い方を変えるきっかけになったのですね。しかしCEOはそのITUから離脱してMOOVERを立ち上げる事になりましたが、ここにはどのような心理変化があったのですか?

ITUは通信規格の統一化を始め、セキュリティ対策等、様々な存在意義があると思っていますが、組織が力を持つと、結局は利権が絡んでしまいます。僕が解決したい問題は、情報格差の解消であり、誰もが公平にアクセスできる通信環境を提供する事でしたが、ITUは※(11)既得権益を確保するために様々な規制や使用の制限を作る動きが出始めました。

※(11) ITUに対する批判的な声 wsj.com(WSJ米版 会員限定記事)Cfr.org
ITUはセキュリティ対策や、接続料金の決定プロセスなど、様々な議題を掲げ、ネットワークへの規制を強める動きがあり、実際に新規制が適用されはじめている。これは直接的に金銭の利益を得る事ではなく、ネット社会に対する権力を強める事が狙いであり、これに賛同する政府も多く存在する。ここで危惧すべき問題は、規制によって技術的な発展が大幅に遅れる事と、本当に自由なインターネットが奪われる事である。

具体的にはどういうことでしょうか?

データ通信網を発達させるためには、それ相応に投資して開発がなされると思いますが、それを使うということは、開発した側は使用料を徴収する権利がある。ただそれ自体は別にいいというか、ビジネスとしては当然だと思います。

しかし、現在のデータ通信網は水や電気などと同じように無くてはならない社会的なインフラとして機能していますが、そのベースとなる通信技術は、広く使われる為に標準化を行う過程で、※(12)特許の塊となってしまい、高額な利用料としてユーザーに跳ね返ります。

そのため収入の低い国では結果的に使える人が限られてしまいます。その土地の収入に見合った料金設定でなければ普及しないですよね。

実際に、通信規格を率先して開発している国では4Gの普及が充分なされて次世代通信規格5Gへの移行を目指していますが、その技術を利用する側の国では20年以上前に実用化された2G規格が今も現役で活躍している現状で、これがデジタル・ディバイド(情報格差)を生む原因になっています。

また独裁政権の色が強い国としては言論の自由を規制したい側面もあり、自国の格差を歓迎する向きもあり、余計に発展しにくい事態となっています。

※(12) 通信技術における標準化と特許の問題
技術標準そのものは様々な製品等を効率的よりコストを抑えて開発することができる側面はあるが、標準化を図る流れで技術面での妥協が生じて本来のメリットが失われてしまったり、特許権が発生して、本来の通信コストよりも割高になってしまう問題を抱えている。

では現状の仕組みからどのような形に変えるべきでしょうか。

綺麗事をいうつもりはないですが、通信技術はコンピュータ・ソフトウェアと同じように※(13)オープンソースのような概念で、分け隔てなく利用できるものであって欲しいと考えています。そのために発生する実質的なコストは、確かに必要だと思います。それは大きな組織としてではなく、1つ1つは小さくても大多数から集まれば実現できるものだと思っています。オープンソースでは少し古い例え方ですが、いわゆるシェアリングエコノミーをモバイルデータ通信の世界に作りたいと考えました。

※(13) オープンソースソフトウェアについてWikipedia 日本語
ソースコードを作成した著作権者が自らの意思で公開して、誰でも再利用、再配布を認めるライセンスのこと。

それがこのプロジェクトでモバイルデータ通信のシェアリングを可能にして、沢山の人達からリソースを集める事ができるという事でしょうか?

mooover

僕はそう考えています。今先進国のモバイルユーザーはデータ通信量を余らせており、全体で約2.75EB(27.5億GB)と推定されます。 しかもこの余ったデータ通信量は使われずに、契約している通信会社へ100%利益としてもたらされています。ただこの事には誰も異を唱えていない。声を上げた所でたいして返ってこない事に気づいていて、せいぜい1人頭月2-3ドルの話で、その労力に見合わないからです。

でもこの余ったデータ通信量は金融資産に換算すると、低く見積もっても月80億ドル超になります。
※詳しくはホワイトペーパーに記載

自分のためでは動機として不十分でも、困っている人に使ってもらえる資産だと考えれば、声を上げる理由もあり、情報格差のない社会を実現するきっかけになると思いました。

おっしゃる通りですね。余った資産を捨てるぐらいなら、困っている人に使ってもらう方が良い。

しかし少々意地悪な質問になるのですが、無制限プランに加入している人の扱いはどうするのでしょうか。

無制限プランは、既定のデータ量を購入している契約ではありません。我々はユーザーとキャリア間の契約を尊守するため、このプランに加入している場合、MOOVERネットワーク上での取引には参加できない事にしています。

答えがわかりきった質問をしてしまいました。この点が気になる人が出るかもとよぎってしまい、つい・・。大事な話の腰を折ってしまいすみません。続きですが、実際本当に実現できるのでしょうか。

もちろん簡単なことではないですが、大枠としてはP2P接続された複数のノードで管理された分散型台帳を構築することで実現できます。

私の稚拙な認識では、それはブロックチェーン技術に聞こえるのですが。

世間に浸透している大凡の定義を借りればその認識でもいいのですが、現在はブロックチェーンと呼ばれるものが様々な形で存在していて、定義も曖昧になってきているので、誤解のないようにしたいですね。

ただ、ここで認識のズレを指摘する意味はあまりないので、興味があれば、この点を詳しく書いたホワイトペーパーを発行しているので、それを見てもらう事にしても良いですか?

はい。勉強不足で申し訳ございません・・・。ではCEO、続きをお願いします。

いえ。こちらも悪い癖が出たと思っています。

それで続きですが、モバイルデータ通信をMOOVERネットワークで管理をする事によって、余ったモバイルデータ通信量は通信キャリアに返すのではなく、個人間での売買が可能になり、実質的に今よりも低コストで通信することが出来るようになります。

その為にもMOOVERネットワークの参加者によって公平な世界を維持していく事を働きかけたいです。そしてアイデアを出し合って、新たなサービスが生まれ、必要性と継続性を高め合う協力的なコミュニティ形成を望んでいます。

moooverネットワーク

既得権益を破壊してネットワークを開放する。これがプロジェクトの目的ですね。

そう捉えられる部分もありますが、僕の中では情報格差が生む情報操作のない世界の実現です

通信網が整っていない、または通信料が高額で支払えないという理由で、情報にアクセスできる機会を奪われてしまう現状を改善することが大切だと思っています。

僕もこれまで、いいものを作れば、それで世界が変わると思っていましたが、それを誰もが利用できる状態にまで普及させなければ全く意味が無く、その過程で大きな障害がある事に気づきませんでした。

まずはそこを変えていくことをしなければ、通信技術に未来がないと考えました。そしてそれはMOOVERネットワークでしか実現し得ないと確信しています。

現状の課題と解決策が非常によくわかりました。

プロジェクト自体に直接関係ないかもしれませんが、少し気になるのでお聞きしても良いですか?最近のICOプロジェクトは、メンバーの顔写真を出されないケースが多くなってきています。以前までは通例のように出ていたものが、最近徐々に減ってきているような印象があります。MOOVERでもそのようなスタイルにされているようですが、これには何か意図があるのでしょうか?

はい。よくご覧になっていますね。昨今のスキャムICOなどの増加により、健全なICOプロジェクトまで同類とみなされ、いわれのない中傷とともに個人情報が公開される事もしばしば起きています。私達の周りでも、そのような被害の声が多く聞こえてくるようになったので、メンバープロフィールは極力最小限に留める事にしました。

チームメンバーのプライバシー保護と同時に、外部からの余計な詮索によって、モチベーションに影響のない環境にしていく事が、プロジェクトを円滑に進める上で重要だと判断したからです。それが結果的に投資家のためにも良い結果に繋がると考えています。あとは私自身、あまり表に出たいタイプではなく、他のメンバーも同様にオタク気質なので、この件は満場一致で賛成でした。(笑)

非常に明確な回答をありがとうございます。投資家の中には気になる方もいらっしゃると思いましたので、お聞きしました。

最後に、もともとの夢である宇宙人との交信はどのように進めていくおつもりですか?

僕自身がその技術を高めるには、能力的にも年齢的にも厳しいと気づき始めていて、それは次の世代に繋いでもらおうかなと。それよりも、本当に宇宙と交信できた時に、既得権益とかそういうくだらない世界で生きているのが地球だと思われないように、もっと上位レイヤーの価値観で、文明の発達した宇宙人と堂々と交信できる世界にしたいなと思っています。

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本当にそうありたいですね。とても素敵なお話をどうもありがとうございました。